病理一口メモ (学生や研修医に役立つ病理の知識,日常の病理診断に役立つ知識などを提供)

・blackという名称はつかないものの,黒色の腫瘍としてはmalignant melanoma(悪性黒色腫)が有名である.Ochronosis(オクロノ-シス,アクカプトン尿症,組織褐変症)では胸膜,肋骨,靱帯,滑膜などに黒色あるいは褐色の色素沈着がみられ,black cartilage diseaseと呼ばれることがある.また,Parkinson’ diseaseの患者でlevodopaやmethyldopaで治療した場合,肋骨にblack cartilageを認めることがある.
・その他,胆石のうち金平糖状で黒色のblack stone(黒色石)は,欧米の色素胆石の大部分を占める.また,長期のミノサイクリンの投与によりblack thyroidが生じることがある.ミノサイクリンでは,授乳中の患者において黒色の乳汁分泌がみられるblack galactorrheaを認めることもある.
・剖検などで副腎皮質に偶発病変としてみられるものとしてblack adenomaがあるが,その黒色調はlipofuscinあるいはneuromelaninによるものと考えられている.その他,稀ではあるが,急性壊死性食道炎では食道が黒色調を呈し,black esophagusと呼ばれることがある(Arch Pathol Lab Med 2011;135:797-798).(by 清水道生)


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・免疫グロブリン(Ig)の免疫染色は免疫組織化学的手法の黎明期から試みられてきた.1個のB細胞や形質細胞が産生するIg軽鎖はκ鎖かλ鎖のどちらか一方のみなので,Bリンパ腫や骨髄腫細胞が一方の軽鎖のみ陽性であれば単クローン性増殖の証拠だとされたのである.ところがIgの免疫染色は容易ではなく,標本をみて判定に迷うことが少なくない.
・Ig軽鎖遺伝子が再構成する際にはまずκ鎖遺伝子が再構成されるが,再構成の結果できた抗体の抗原親和性が低かったり,再構成そのものが失敗すると次にλ鎖が再構成される.結果として多クローン性のB細胞・形質細胞集団中に発現されるκ鎖:λ鎖の比はおよそ3:2となる.
・パラフィン切片でIg軽鎖発現をみる際,κ:λ比がどれくらい偏っていれば単クローン性といえるのかが問題となるが,Igの免疫染色の感受性を考慮してκ鎖優位の場合は10:1以上,λ鎖優位の場合は1:5以上の場合にmonoclonal restrictionとみなすのが一般的である.一方flow cytometryにおける検索ではκ鎖優位の場合は3:1,λ鎖優位の場合は0.3:1というのが一応の基準である.(by 茅野秀一)


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悪性黒色腫(malignant melanoma)はメラノサイト由来の悪性腫瘍で,その悪性度が高いことで知られている.その臨床診断を下す際には,ABCD ruleがよく使用されるが,ここではこれにEを加えたABCDE rule(表)を紹介する.

  • ABCDE ruleとは,英語で表現された以下に示す臨床所見の頭文字を取った特徴をさす.この所見は臨床像のみならず,組織像にも当てはまる.

表 ABCDE rule

Aasymmetry(非対称性)
Bborderline irregularity(腫瘍辺縁の不整)
Ccolor variegation(色の濃淡)
Ddiameter generally greater then 6mm(直径が6mm以上)
Eelevation(隆起)
  • なお,最近では4 mm以下の悪性黒色腫もまれではないことから,Dに関しては大きさではなく,dark colorあるいはdermoscopic structureと記載されることもある.また,Eに関しても隆起ではなく,病期の進行に関係するevolutionあるいはenlargementとする記載もみられる.

(by 堤 直之)


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・病理解剖の手技には,全臓器を一塊として摘出するRokitansky法と,個別に臓器を摘出していくVirchow法の2種類がある.
・Rokitansky(1804-1878)はドイツの病理学者で,30,000を越える剖検を行ったとされ,Virchow(1821-1902)もドイツの病理学者で,政治家でもあった.
・Rokitansky法では,ご遺体の返却までの時間が短く,臓器の相互関係や病変の位置,広がりの観察が容易である点が長所である.欠点は,摘出した臓器全体が非常に重く,時に各臓器の分離に手間取ることがある点である.
・Virchow法の長所は,臓器の分離が比較的楽に行うことができ,剖検室の汚染が最小限ですむことなどである.欠点として,臓器間の連続性を保ったままの検索ができないことや,ご遺体の返却までに時間がかかることなどが挙げられる.
・ヨーロッパではVirchow法が,アメリカではRokitansky法が行われる傾向にある(参考文献:清水道生 欧米における病理解剖の実態.医学のあゆみ 1998;185:132)(by 山口 浩)


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・転移性骨腫瘍は,原発性悪性骨腫瘍よりはるかに多く,特に成人において骨腫瘍を認めた場合は,転移性腫瘍をまず鑑別に挙げる必要がある.
・骨に転移しやすい腫瘍としては,女性では乳癌,男性では前立腺癌が多く,肺癌,甲状腺癌,腎癌が続く.
・転移を起しやすい骨は,原発巣に近い骨に多いが,一般には脊椎,骨盤骨,肋骨,胸骨や四肢近位部の骨に高頻度である.これらの骨には弁がないために血流がうっ滞しやすいBatson静脈叢1)と呼ばれる静脈叢が存在し,転移しやすい環境にあるとされる.
・骨転移巣は,病理組織像から,①溶骨型,②造骨型,③混合型,④骨梁間型の4つに分けられる.溶骨型には甲状腺癌や腎癌,肺癌,副腎癌,悪性黒色腫が,造骨型には前立腺癌が,混合型には乳癌が多い.これらの分類は画像診断においても有用である.(by村田晋一)(文献)1. Oscar V. Batson: The function of the vertebral veins and their role in the spread of metastases. Ann Surg 1940;112:138–149


Posted by 病理診断科

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