病理一口メモ (学生や研修医に役立つ病理の知識,日常の病理診断に役立つ知識などを提供)

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  • 病名に名前のついた日本人がおられることは皆さんよくご存じだと思います.最近では正式な病名に名前がつくことは少ないと思いますが,以下の偉大な日本人の先達にあこがれて日夜,医学研究にがんばっておられる先生も多いことだと思います(ブラックジャック先生やスーパードクターK先生を目指すのも有りですが(^o^)).
  • ①太田母斑(眼上顎褐青色母斑):真皮メラノサイトの存在による褐青色色素斑で,顔面特に三叉神経第1・2枝の支配領域にみられるもの.その他の部位に後天的に生ずるものは後天性真皮メラノサイトーシスacquired dermal melanocytosisと呼ばれる.太田正雄先生は,真菌学分野では太田-ランジェロン(Langeron)の分類を発表され,木下杢太郎の名で詩人・作家としても有名な方です.
  • ②伊藤母斑(肩峰三角筋部褐青色母斑):真皮メラノサイトの存在による褐青色色素斑で,後鎖骨上神経および外上腕皮神経の支配領域にみられる.
  • ③神崎病:成人に,びまん性体幹被角血管腫を呈する疾患で,1987年神崎保らが報告.Schindler病と同様リソソーム内のα-N-アセチルガラクトサミニダーゼ(加水分解酵素)の遺伝子異常(酵素欠損)によって生じる.因みに,私は神崎保先生の皮膚科の講義を受け,ポリクリでゲシュライバーしました.
  • ④大藤病(好酸球性膿疱性毛包炎):主に顔面・体幹に,有痛性,毛包一致性の丘疹・小膿疱の環状局面を生じる.毛包内や毛包,脂腺周囲に多数の好酸球を含む炎症性細胞浸潤と,末梢血内好酸球数の上昇を認める.近年,AIDS関連の皮膚症状として注目されている.
  • ⑤木村病(好酸球性リンパ濾胞様構造増生性肉芽腫):耳下腺下部や顎下部,四肢などの軟部組織に無痛性の皮下腫瘤を形成する.組織学的には皮下脂肪組織や真皮下層に,リンパ濾胞を伴うリンパ球,組織球主体の炎症細胞浸潤を示し,多数の好酸球浸潤と小血管の増加をみる.悪性リンパ腫を鑑別しなければならない.血清IgG高値がみられ10-20%に腎症を伴う.
  • ⑥高安病(大動脈炎症候群,脈なし病,特発性肉芽腫性動脈炎):大動脈およびその主要分枝,肺動脈,冠動脈に狭窄,閉塞,拡張などの変化をきたす原因不明の非特異的大型血管炎で,病理学的には,肉芽腫性炎の像を呈し,血栓形成に伴う内腔閉塞がよく認められる.因みに高安先生は眼科医です.
  • ⑦川崎病:主に4歳以下の乳幼児に好発する,全身の血管炎を特徴とする原因不明の急性熱性疾患で,診断は6つの主要症状のうち5つ以上を伴うものとされる(参考:www.kawasaki-disease.org).1967年に川崎富作先生が50症例をまとめて報告した.
  • ⑧泉熱:1920年代後半に流行した,猩紅熱様ないし麻疹様,風疹様などの多彩な発疹,二相性の発熱,結節性紅斑,腹部症状を示す小児疾患で,Y. pseudotuberculosisが原因菌.川崎病との鑑別が必要になる場合があるが,現在ではほとんど見られない.1929年に泉仙助先生が報告した.
  • ⑨橋本病(慢性甲状腺炎):橋本病は甲状腺腫大の強い慢性甲状腺炎で,組織学的にはリンパ球の浸潤,濾胞上皮細胞の変性,線維化などを認め,サイログロブリンや甲状腺ペルオキシダーゼに対する自己抗体の存在を特徴とする.甲状腺機能低下症の原因として最も頻度が高く,成人女性の約5%は本症とみなしうる.男女比は約1:20.
  • ⑩菊池病(亜急性壊死性リンパ節炎,組織球性壊死性リンパ節炎):10-30代を中心として,男女比1:2,多くが頸部リンパ節腫脹で発症する.発熱を来すことが多く,1/5は皮疹を伴う.組織学的には,リンパ節の一部に巣状に細網細胞の密な増殖がみられ,核崩壊産物や,赤血球や核崩壊産物を貪食した組織球が目立ち,好中球などの炎症細胞の浸潤が目立たず,壊死傾向は乏しい.病因は不明で,治療の有無にかかわらず,予後は良好であることが多い.
  • そのほかにも,瀬川病,小阪病,平山病,福山型筋ジストロフィー,福原病,横川吸虫症,宮崎肺吸虫症,さらに高月病,Crow-Fukase症候群など,その数は40以上に及ぶといわれています.(by 永田耕治)

Posted by 病理診断科