病理一口メモ (学生や研修医に役立つ病理の知識,日常の病理診断に役立つ知識などを提供)
・Bリンパ球や形質細胞が産生分泌する免疫グロブリン(Ig)は重鎖と軽鎖から構成される.κ鎖とλ鎖の2通りしかない軽鎖の免疫染色がよく行われるのに対し,重鎖発現が病理診断上問題になることはあまりない.しかし実はIgD発現に注目するとなかなか興味深いものがある.
・生理学的にはリンパ節マントル層のB細胞はIgMとIgDを発現しており,抗原刺激を受けると胚中心でIgGやIgAを発現するようになる(クラススイッチ). DNAレベルでみるとIg重鎖遺伝子は上流からCμ,Cδ,Cγ,Cαといった定常域遺伝子が飛び飛びに並んでおり,IgG陽性細胞ではCμやCδが欠落してCγが上流側に再構成しており,IgA陽性細胞ではCμからCγが欠落してCαが上流側に再構成している.IgDが単独に発現されるためにはCμの欠落を伴うCδ再構成が必要になる.
・詳しい説明は省くが実はこれはまれな現象で,しかも細胞膜表面に発現される膜貫通型ではκ鎖が,細胞外に分泌される分泌型ではλ鎖がそれぞれ発現している.したがってほとんどのIgD陽性の形質細胞腫はλ鎖陽性で,臨床的には肝脾などの髄外浸潤傾向が強い.また,ホジキンリンパ腫結節性リンパ球優勢型で特異細胞がIgD陽性の例では発症年齢が若く,男性に多いなどの特徴がある.さらにリンパ形質細胞性リンパ腫のように原則としてIgDを発現しない腫瘍もあり,IgD発現が鍵となる場合がある.(by 茅野秀一)(文献)1. Chen K, et al. New insights into the enigma of immunoglobulin D. Immunological Reviews 2010; 237: 160-179. 2. Prakash S, et, al. IgD positive L&H cells identify a unique subset of nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphoma. Am J Surg Pathol 2006; 30: 585-592.
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