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15.外科病理と神経変性疾患 —Parkinson病(PD) —
11.06.02
・PDは1817年にJames Parkinsonの報告以来,種々の研究がなされてきた代表的な神経変性疾患である.臨床的に振戦,無動,筋固縮,姿勢・歩行障害の4大徴候や起立性低血圧・排尿障害・便秘など自律神経症状が,また,神経病理学的には中脳黒質や橋青斑核を中心としたレビー小体(LBs)・レビーニューライトの出現がみられる.
・近年,LB関連病理の進展様式に関するdual hit theoryの提唱(Neuropathol Appl Neurobiol 2007;33:599-614),皮膚生検検体のレビー小体関連疾患診断への有用性(J Neuropathol Exp Neurol 2008;67:945-953)など,他臓器でもLB関連病理が報告され,現在では全身疾患として認識されつつある.
・2010年,Lebouvierら(PLoS ONE 5(9). doi:10.1371/journal.pone.0012728) は結腸生検材料を用いたPDの臨床・病理学的検討を行い,結腸生検粘膜におけるLN病理の発現は1) PDで優位にみられる(P<0.0001),2) PD運動症状の重症度と関連する(P<0.01),3) Dopa反応性と負の関連性をもつ(P=0.0064),4) より消化器症状(便秘)を来しやすい(P<0.05),としている.
・これまで神経変性疾患は病理解剖を中心とした検討に重点が置かれてきたが,今後は早期診断・病期推定を目的とした外科病理学的検索が重要となる可能性がある.(by 本間 琢)
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14.グリオーマの新規マーカー:IDH1 R132H抗体
11.04.15
・近年,グリオーマの予後推測や治療効果推定に有効な染色体・遺伝子異常と分子発現が複数の施設により報告され(Tabatabai G et al. Acta Neuropathol 120;585,2010),大学病院などでは今後の病理診断報告書への記載要求が予想される.
・イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(Isocitrate dehydrogenase-1: IDH-1)は,クエン酸回路の第3段階を進める酵素でその遺伝子は染色体 2q.33.3に位置する.近年の分子生物学的脳腫瘍研究により,IDH-1の変異がグリオーマにほぼ限られることと早期に起こる異常であることが判明した(Riemenschneider MJ et al. Acta Neuropathol 120;567,2010).
・変異の90%以上は,R132H (G395A) であり,この変異を有するIDH-1を認識するモノクロナール抗体が開発された.昨年にはその市販抗体が入手可能となった(anti-human IDH1 R132H mouse MA , clone:H09, Dianova).
・IDH-1抗体免疫組織化学は,1)グリオーマと非グリオーマの鑑別診断,2) びまん性星細胞腫と毛様細胞性星細胞腫の鑑別診断,3) 原発性膠芽腫と続発性膠芽腫の鑑別,4) グリオーマ・グレードII – IVの予後判定に有用な可能性が示唆されている.(by 佐々木 惇)
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13.SALL4と胚細胞への分化
11.02.14
・SALL4は組織発生に必須の転写因子であり,胚性幹細胞の自己複製と多分化能維持に関わる.近年,SALL4は胚細胞腫瘍のマーカーとしてもその有用性が着目されている.
・卵巣の胚細胞腫瘍と非胚細胞腫瘍を対象とした免疫組織化学的検討(Am J Surg Pathol 2009; 33: 894-904)では,卵黄嚢腫瘍,ディスジャーミノーマ,胎芽性癌,性腺芽腫は全例がSALL4に陽性,成熟奇形腫,カルチノイド,卵巣甲状腺腫は陰性,未熟奇形腫においては様々な染色態度を示したが,非胚細胞腫瘍は一部の明細胞腺癌を除いて陰性であったと報告されている(自験例では明細胞腺癌はすべて陰性).このことから,時に問題となる卵黄嚢腫瘍と明細胞腺癌の鑑別にもSALL4が効力を持つことが示唆される.
・また,興味深いことにAFP産生胃癌でも高率に陽性を示すと報告とされている(Am J Surg Pathol 2010; 34: 533-540).したがって,SALL4は胚細胞腫瘍に限らず,“上皮性腫瘍とAFP産生能の関連”においても不可欠な因子であると推察される.(by 目黒史織)
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・膠原性胃腸炎としてはcollagenous gastritis,collagenous sprue,collagenous colitis(粘膜固有層の慢性炎症細胞浸潤,100個の上皮細胞中に10-20個以上のリンパ球浸潤,上皮細胞直下に10 μm以上のcollagen沈着)が知られている.臨床症状や組織形態が類似することなどから,一連の関連疾患と考えられているが,collagenous sprueは約半数の患者で死に至る可能性のある進行性の吸収不良を生じる点が異なる.また,小児例と成人例は異なった特徴を示す.
・膠原性胃腸炎の病因についてはまだ十分にわかっていない.これまでの研究では,細胞外基質産生のアンバランスと分解によって,粘膜固有層でコラーゲンI,III,IV,VIとテネイシンの蓄積が生じていると考えられている.また,形質転換成長因子,血管内皮増殖因子,塩基性線維芽細胞成長因子の発現の増加により,脈管新生の促進,血漿蛋白漏出,線維素溶解減少,好酸球・好中球の活性化が生じると考えられている.
Arch Pathol Lab Med 2010;134:1485-1489(by 永田耕治)
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11.子宮の腫瘍とHPV感染
10.11.15
・“The Bethesda System 2001”(以下TBS)がこの1~2年であっという間に浸透し,子宮頸部細胞診のあり方が様変わりした感がある.ただし,従来の頸部扁平上皮内病変や悪性腫瘍の概念・診断基準に根本的な変遷が生じたわけではない.TBSが短期間で本邦や多くの諸外国で受け入れられた背景には,頸部病変におけるHPV感染病因論の成熟がある.今や扁平上皮系病変や腺系病変は言うに及ばずありとあらゆる頸部病変が,HPV感染という共通の必要条件を満たすという認識に至った.
・こんな中,頸部病変と体部病変の鑑別のポイントにHPV感染の有無を強調する文献が目につくようになった.その代表的な例を以下に示す:Endocervical adenocarcinoma with prominent endometrial or endomyometrial involvement simulating primary endometrial carcinomas (Am J Surg Pathol. 2009 Jun;33(6):914-24.).タイトルが示すように,病変の主座が体部にあっても―従来,体癌であると判断するに十分な証左のはずであるが―,HPV感染陽性(補助的にp16+, ER+/-, PgR+/-)をほぼ絶対的なMerkmalとしてこれら腺癌を頸癌と結論づけている.
・頸癌の体部進展は臨床病期に影響しないが,体癌の頸部進展はup-grade(I期からII期)に結びつく.果たして,HPV陽性=頸癌 vs. HPV陰性=体癌の方程式は絶対的なものか.さらに全身のあらゆる臓器に発生しうる小細胞癌でも,頸部原発はHPV陽性であるのに対して他の部位から発生したものはHPV陰性と報告している文献もある.暫しはこのような「診断基準」を信じながら,将来の方向性を見つめていたい.
(by 安田政実)
Posted by 病理診断科
